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研究によると、マインドフルネス瞑想を定期的に行うことで、回復力が高まる、ストレスが低減する、感情をコントロールできるようになる、より前向きな見通しを立てる力が身につき、挫折から立ち直りやすくなるなど、仕事の成果にポジティブな影響を数多く与えるということがわかっています。ダニー・ペンマン氏の著書『Mindfulness for Creativity』では、瞑想などのマインドフルネス手法は、創造的な問題解決に必要なスキルを向上させると書かれています。マインドフルネス瞑想によって、短期間でも創造性を高めることができるかどうか検証するため、さらに、高まった創造性により生み出されたアイデアが、組織にどのようにして貢献できるのかをテストするために、オランダ・ロッテルダムのエラスムス大学にて実験を行いました。その結果、短時間の瞑想でもアイデアの多様性がうまれたほか、心をよりポジティブでリラックスした状態にできるということがわかりました。筆者達が行った2つの実験でも、コーヒーを1杯飲む程度の時間をかけるだけで、アイデアも、意思決定も、気分も、すべて向上するということが証明されています。日本でもこれまではたばこ休憩と呼ばれる時間などがあり禁煙問題となってきていましたが、一部の会社では昼寝の時間を設けるなど全員に恩恵を受けてもらい、発想力を導く取り組みも行われています。誰もが・毎日マインドフルネス瞑想し続けるということは難しいと思われるため、より時間や手法を短くして隙間時間に英気を養う方法を提示示していく必要があるでしょう。
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マインドフルネスは「することモード」から「あることモード」へのギアチェンジによって、ストレス状態からストレスフリー状態に移行することが出来るテクニックであり、それはトレーニングによって獲得出来るとの説明でした。
しかし、マインドフルネスがストレスフリー状態を実現していることの科学的なエビデンスが示されていませんでした。マインドフルネスの有用性を主張するためには、このテクニックがストレスを排除したことを示す客観的にデータが必須です。
人はストレスを感じると副腎皮質からのコルチゾールの分泌が亢進され、血中のコルチゾール濃度が上昇することが知られています。そのためコルチゾールは別名ストレスホルモンとも呼ばれています。
したがって、ストレスを評価する各種実験においては、コルチゾールがストレスマーカーとしてよく使われています。例えば、マインドフルネスを実施前後での被検者の血中コルチゾール濃度を、LCMSなどの高感度測定法を利用して定量し、その濃度の差を統計学的に評価して優位差が認められるかを検証してみては如何でしょうか。
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現在、マインドフルネスは有効な技法として、臨床現場で使われています。ただし、マインドフルネスでは取り除くことが出来ない感情があります。それは、怒りです。なぜなら、怒りは「今ここで」の感情だからです。マインドフルネスは「今ここで」に集中する技法です。例えば、不安は未来に目を向けることで生じてくる感情です。一方で、後悔などの感情は過去に目を向けることで生じてくる感情です。これらの感情に対してアプローチをする際、マインドフルネスは有効です。しかし、怒りという感情は「今ここで」瞬時に湧き上がってくる感情です。したがって、マインドフルネスを行っても効果が少ないのではと考えられています。
また、マインドフルネスはそもそも仏教の考えである『念』から始めっているのではないかという意見もあります。発祥は日本だったのですが、米国でマインドフルネスという概念となり、結果的に日本に逆輸入されたという珍しい概念だといえるでしょう。しかし、そもそも日本で生まれた概念であれば、日本人になじみやすい考え方であるので、マインドフルネスが日本で浸透したのも自然の流れといえると思います。
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姿勢と呼吸法は幼児期から正しい方法を身に着けることが重要であると言う事を度々目にしますが、この言説の根拠がマインドフルネスに基づくものであると認識しています。これは実際に自分自身の精神に科学的な影響を与えると同時に、行うことで精神的に安定するというプラシーボ効果の側面も持ち合わせていることからです。論文中で語られるように現代はスマートフォンの使用や動画視聴など目の前のもの以外への興味の矛先が向く対象が様々のため、自分に対して有効であるマインドフルネスを含む精神療法を持っておくことで抑止力と出来る場合があります。一方でマインドフルネスの問題点を挙げるとすれば、正式な医療行為や治癒方法として認められているものではないため自分の抑制が効かなくなった時にマインドフルネスを行うことで鎮まると過信しすぎてしまうことは危険です。マインドフルネスをはじめとする多くの精神療法の効果は個人差があることが前提であり精神的な病の根本的な解決につながるものではありません。自分の現在の精神状況がマインドフルネスや立腰姿勢を実行することで改善するのかどうか、という点は自身の中で線を引き医療行為が必要である場合はこの手法を拠り所にするのではなく正式な医療機関の受診を行うことを意識して自身に対して適切な処置を行ってあげる必要があります。
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現代社会において過度のストレス状態にさらされると、自律神経系がバランスを崩し、身体の不調や心の病など、様々な症状を引き起こすと考えられています。こうしたなかで、香りがもつ“癒し”の効果が注目を集め、心療内科や産婦人科、緩和ケアなど多岐にわたる医療現場で、症状緩和や心身のリラックスを促す芳香療法として試用されるようになってきました。日本で昔から、精神統一時や仏事などに用いられてきた「香」である白檀(びゃくだん)と沈香(じんこう)の香木を使って、香りが自律神経系に与える影響についてを研究が行われました。白檀は一般的な「お線香の香り」、沈香は「お寺や仏壇の香り」を想像すると、思い浮かぶかもしれません。研究の結果、白檀・沈香ともに、交感神経活動(自律神経の中で興奮の刺激を全身のさまざまな器官に伝える神経)だけでなく、副交感神経活動(からだの各部分の活動性を下げ、次の活動に備えて回復、修復させる神経)も抑える作用があることがわかりました。また鎮静効果をもつこともわかっています。一方で、白檀は刺激性香油と考えられており、海外においては自律神経活動を増大させる作用があるという報告もあるなど、香りの評価は文化や知識、個人の嗜好などによって親しみやすさが異なるため、自律神経系への効果は対象者によって差が出てくるものと考えられます。香りの嗜好が潜在的に違っているのか、置かれている環境で変化していくのかなど、今後の研究のも期待したいところです。